
剣道の道場にはたくさんのかわいい生徒さんがやってきます。古くからの武道ですから練習はそれなりにたいへんですし、それに耐え抜いた子だけが上達していくと思われがちです。
その子は、学年の途中から剣道を始めたので、同学年のほかの子どもたちより上達が遅れていました。子どもですから、取り残されると気を紛らわせるためにふざけたりすることもあります。そのため頻繁に叱られてしまい、周囲からはますます敬遠されることに。でも、やる気は人一倍あったので、先生方は早く上達させようと一生懸命に教えていました。
でも、しばらくして、その子のお母さんから「やめたいと言っている」と聞かされ、正直なところ残念に思う一方で、指導方法の難しさに悩んでもいまし た。ところが、それからもその子はやめずに、がんばって毎回稽古に来ています。もう来ないと思っていたのに続けているのを不思議に思ったほかの子が、その 子に「なんでやめなかったの?」と聞いたところ、「やめようと思ったんだけど、風美先生がほめてくれたので続けようと思った」と答えたそうです。
ほ んの些細なことかもしれませんが、ほめるということは、それほど人に影響を与えるのだと改めて感じさせられました。厳しい指導が必要なことが多い剣道で は、叱ることで理解させるべきこともあります。でも、ちょっとした言葉の記憶が、その子の将来に大きな影響を与えるかもしれないと思うと、本当に指導する 内容のひとつひとつを大切にしなければならないと改めて感じているこのごろです。